干潟と森をよーく見ながら歩いて学ぼう 子網代の森で動植物を観察しよう

品川駅から京急線と京急バスで約2時間。
小網代の森は、とても貴重な動植物の宝庫です。
40年以上、小網代の森の保全に携わって来られた、
岸由二先生(慶應義塾大学名誉教授)の解説とともに小網代の森の魅力をご紹介。
親子で自然の中を歩いてみよう! カニは見つけられるかな?

小網代の森

小網代の森は、三浦半島(神奈川県横須賀市)にある、約70ヘクタールの緑地。小網代湾に面する干潟を含めて、小網代の森と呼びます。
関東で唯一、森、川、湿原、干潟、海が人工物で遮られることなく、源流から海までの生態系が自然のまま残された場所です。

小網代の森

小網代の森は、神奈川県が管理する特別保護地区です。学習などを除いて、動植物の採集は禁止されています。

小網代の森マップ
今回のコース。(1)宮ノ前峠入口からスタート(2)干潟でチゴガニのダンスを観察しよう!(3)脱皮したアカテガニを発見!!(4)湿原を歩こう

今回は、宮ノ前峠入口から入り、干潟でカニを観察、えのきテラスを通ってやなぎテラスまで進み、眺望テラスを抜けて宮ノ前峠入口に戻るコース。 約1〜2時間で回ることができます。体力に合わせて、観察する時間を調整しよう!

岸由二(きし・ゆうじ)

岸由二(きし・ゆうじ)

NPO法人小網代野外活動調整会議代表。慶應義塾大学名誉教授。専門は、進化生態学。著書に『いのちあつまれ小網代』(木魂社)、『「奇跡の自然」の守りかた』(筑摩書房)などがある。

観察スタイル:帽子、リュック、長袖、長ズボン、スニーカー

スズメバチやマムシがいたり、植物に触れるとかぶれてしまうことも。長袖、長ズボンの着用を!

色に注意!!(スズメバチ対策)。赤・黒・黄色などのハデな色、原色はNG。白っぽいもの、薄い茶色などの色が良い。持ち物リスト:飲み物、おやつ、ゴミ袋、タオル、ウエットティッシュ、虫除け

宮ノ前峠入口からスタート

草木が生い茂る宮ノ前峠入口の前に立つ少年

京急バス「シーボニア入口」バス停から宮ノ前峠入口までは徒歩約20分。白髭神社の前を通り、細い道を登って行くとトイレが。小網代の森にはトイレがありません。お手洗いはここで済ませて。さらに進むと、宮ノ前峠入口へ到着します。ここから、小網代の森へレッツゴー!

山肌の隙間に潜むアカテガニとそれを見つけた少年

早速、山肌の隙間に、アカテガニを発見! アカテガニは、陸地を好む森のカニ。暗くて見えづらいので、そーっとスマホのライトを当てて見てみよう。光が当たると奥に逃げてしまうので、慎重に。

アカテガニ

「森のカニ」とも呼ばれ、森に暮らすカニです。脱皮の時以外、ほとんど水に入りません。斜面の小さな穴や岩の隙間に棲んでいます。落ち葉の下や、木の上にいることもあります。

山肌の隙間に潜むアカテガニとそれを見つけた少年
小網代湾

宮ノ前峠入口から進んで行くと、小網代湾が見えてきます。美しい景色にうっとり。耳をすませば、ウグイスの声が聞こえてきます。

干潟でチゴガニのダンスを観察しよう!

干潟でチゴガニのダンスを観察する少年

潮の引いた干潟では、体長約1㎝のチゴガニのオスが、白いハサミを振り上げて、求愛のダンスを披露。チゴガニがダンスをする様子は、とっても愛らしく感動!! 満ち潮時は見ることができないので注意! 引き潮時、岩場とその周辺限定でマナーを守って観察しよう。採集は厳禁!!

チゴガニ

日本列島の温暖な干潟(砂地)に生息する小型のカニ。水色の顔に白いハサミが特徴。巣穴の周囲30㎠ほどを縄張りとしています。ダンスは、求愛や縄張り宣言のためと言われています。

チゴガニのオスは、メスが近くに来ると爪(ハサミの先部分)を伸ばします。メスは気に入ったオスの巣穴に入ります。だいたい4〜6月、涼しいところでは、真夏でも求愛ダンスを見ることができますよ。
チゴガニ
潮が満ちる干潟

干潟で観察をしていたら、潮がみるみる満ちてきました。一旦引いたように見えても、あっという間に潮が満ちるので、注意が必要です。

対岸の枝の位置が海面と平行になっている様子

「対岸の枝の位置が海面と平行なのは、どうしてだと思う?」と岸先生。満潮時に海水に浸からないようにするためとのこと。

脱皮したアカテガニを発見!!

アカテガニの抜け殻を手のひらに乗せる
アカテガニと少年

干潟近くの水たまりの中で、アカテガニの抜け殻を発見! アカテガニは森に棲み、干潟、海を行き来しながら暮らしています。観察していたら、アカテガニが登ってきて、ドッキドキ! ※脱皮を紹介するために、手に乗せて撮影しました。普段は禁止です

カニは脱皮して大きくなります。アカテガニは、浸透圧の関係で海水の中で脱皮できません。そのため、森の中で真水を探し、脱皮します。脱皮したばかりのカニは柔らかく、水分を吸って体が大きくなり、徐々に殻が硬くなります。

湿原を歩こう

湿原を歩く少年

干潟での観察を終えたら、今度は川の上に設置された木道を歩いて、湿原の中へ。えのきテラスからやなぎテラスまでは約300メートル。 湿原の植物や、チョウ、トンボを探しながら、ゆっくり歩いてみよう。生きものに夢中になって、木道から落ちないように注意してね!

空を観察
地面を観察
湿原の中の散策路
甘い香りのスイカズラ。花の香りを嗅いでみよう!白い花スイカズラ(提供:NPO小網代野外活動調整会議)

スイカズラ

日本全国に分布する、常緑蔓性木本。花は、初夏に2つ並んで咲きます。初めは白で時間が経つと黄色に変色します。ジャスミンに似た甘い香りが特徴です。

湿原に群生するクサヨシとクサヨシの穂

クサヨシ

水辺や日当たりの良い湿地に生えるイネ科の多年草。長い地下茎を張って群生します。茎はしっかりと直立し、高さは1〜1.5mほど。初夏に穂を出します。

湿原に群生するクサヨシとクサヨシの穂

ハンゲショウ

水辺に群生するドクダミ科の多年草。6月ごろから葉が半分ほど白くなります。これは、目立たない花に代わって虫を呼ぶためだと考えられています。

ハンゲショウは、豊富な水がないと育ちません。夏になると葉が半分ほど白くなるので、半化粧=ハンゲショウと言います。白くなった葉を探してみよう!
湿原に群生するクサヨシとクサヨシの穂

アサヒナカワトンボ

山間の川辺に生息するトンボ。小型の昆虫などを食べて、水辺を飛び回ります。夏に繁殖し、幼虫は1〜2年ほど水中で過ごし、成虫になります。

やなぎテラス

今回の終点、やなぎテラスに到着! 「様々な湿地と湿地の植物」についての説明が。水分補給をして、少し休憩したら、宮ノ前峠入口へ戻ろう。

小網代の森は、約3,000〜4,000種類の生物が暮らす、貴重な森です。珍しい生きものや、絶滅危惧種だらけ。ルールを守って、気をつけながら、生きものの観察を楽しんでください。
眺望テラスから見た、えのきテラス
森に流れる小川

ルールを守ろう

  • ゴミは持ち帰ろう
  • 火の使用は禁止
  • 動植物は持ち帰らない
  • スズメバチやヘビに注意
  • 散策路以外には立ち入らない
  • ペットは入れません
  • 自転車・バイクは乗り入れ禁止

トイレ体験

白髭神社と宮ノ前峠入口の間にあるトイレ。小網代の森には、トイレがありません。行く前に済ませましょう。

小網代の森の概要

HP
神奈川県のHP「小網代の森」ページ
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/d2t/kankyo/p820028.html
アクセス
【電車・バスをご利用の場合】
京急線「三崎口」駅より京急バス「シーボニア入口」下車、徒歩約20分。
※「シーボニア入口」へのバスは、1時間に1〜2本程度です。事前にバスの時間(行きと帰り)の確認を!

京急線と京浜急行バスは、小児料金がお得!!

小児ICカードのご利用で、
京急線は全区間均一75円(空港線加算運賃25円は別途ご負担いただきます)
京浜急行バスは全区間均一100円
たとえば、京急線品川駅〜三崎口駅と京浜急行バス「三崎口駅」〜「シーボニア入口」までの小児運賃は、片道175円です。

【車をご利用の場合】
小網代の森インフォメーション(ベイシア三浦店2階)そばにある、三浦市民交流拠点駐車場をご利用ください。
駐車場すぐ近くの京急バス「引橋」バス停から乗車し「シーボニア入口」で下車。徒歩約20分。
※「シーボニア入口」へのバスは、1時間に1〜2本程度です。事前にバスの時間(行きと帰り)の確認を!
開場時間
【4-9月】7:00-18:00/【10-3月】7:00-17:00